農耕の開始によって人口が増加し、国家が形成されるようになると、国家を統治する政権は自らの権威を示し、正当化するためにピラミッド(墳墓)や古墳などの大土木事業を行うようになる。しかし、次第に政権が安定してくると国家の繁栄を目指した公共事業が行われ始める。
国家を維持するための居住地と人口を支えるためには多くの食料と飲料水が必要になる。そのため、治水問題と灌漑問題の解決が重要になる。治水問題では洪水などによる水害を防ぐための築堤などの河川整備が、灌漑問題では水源確保のためのため池、堰堤やダムの建設と水源から目的地までの用水路の建設などの農地整備が相互に関連しながら行われてきた。
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古代エジプトにおいては麦類を中心とした畑作農業が行われており、紀元前3500年ごろに灌漑が始まっていたと考えられている。その灌漑はナイル川の氾濫を利用した畑作灌漑であった。青ナイル川から流れ込む春季の多量の雨水によってナイル川下流では夏季にはゆっくりと水位が増水し、氾濫を起こす。この氾濫は日本で見られるような濁流で家々を押し流すような氾濫ではなく、ゆっくりと次第にナイルの水が堤防を超え外部に漏れ出るような様子の氾濫である。
この氾濫を耕地に誘導することによって耕地の土壌中に十分な水分が保水されるという湛水灌漑であった。